愛は人生を楽にする。
「すべての悩みは人間関係の悩みである」
アドラーの言葉である。
言葉どおり、世の中に溢れる悩みの全てが人間関係に直接関係するというわけではなくて、全ての悩みは掘り下げていくと最終的に人間関係に繋がっていく、という意味だと解釈している。
(例えば、国家試験に合格できない、というのが悩みだとすると、その悩みの根幹は「就職できないと家族に認めてもらえない」、「社会的に地位がある仕事をしなければ友人や恋人に馬鹿にされる」などの人間関係の悩みに繋がりうる。)
今回は、じゃあ悩みの根本である人間関係とやらをどうにかしたら、人生から悩みなんて消え去るよね。楽に生きれるよね、というお話。
1 なんで苦しまなきゃいけないのかって?愛が足りないからさ!!
対処療法は世の中にあふれているし、実行も簡単なことが多い。
相手に何も求めない、期待しない、付き合う人間を絞る、などは良くアドバイスされる対処療法で、こういった方法で楽になる人も多いと思う。
でもこれらはあくまで対処療法にすぎないから、本当に悩みの根本を断ち切ろうと思ったら、根本的に自分を変えなければいけない。
なぜ人との関わりで苦しむのか。
それは相手から思ったように愛されない、または自分を傷つけられるのが怖い、と感じるからだ。
思ったように愛されなくて辛いなら期待するのをやめれば良いし、傷つけられるのが怖いなら距離をおけば良い。絶対に自分を傷つけないであろう人とだけ付き合えば、傷つくこともない。確かに、対処療法は理にかなっている。
でも本当の原因は自分の中に相手への愛が足りていないがために苦しむことになっていることに、いつまでも気づかない。
「愛」は何も甘いものではなくて、好き嫌いさえも超えた絶対的な何かである。
それは一つの生命への尊敬であり、愛は無条件に存在するものだ。
母親は惜しみなく愛情を子供に与えるけれど、子供から何かを返されなくても不満に思ったりしないし、反抗期の子供にどんなに罵られ嫌われようと、子供のことを嫌いになったりはしない。それは母親の中に愛が無条件に存在しているからで、子供の行動や思考に関係ないから、母親はいつだって愛を注ぎ続けられる。
「愛」は特定の人との間にだけ存在すると思っていた。
特定の人との間にだけであっても愛が存在すると確信できる人は、幸運な人だと思う。
その人は愛し方を知っているし、愛をもらったことがあるのだと思う。
でも本当は愛は全ての人との間に存在するもので、好きな人との間にだけ発生するものなんかじゃない。無条件なのだから、好き嫌いという感情を超えた先にある。そこを間違えるから、苦しむことになる。
あなたの悪口を言うあの人の心にだって、あなたへの愛はある。
そしてあなたの心にも、あなたの悪口を言うあの人への愛はある。
見ようとしないから見えないだけで、愛は無条件に存在しているからだ。ただ見ようとしないだけだ。
2 全ての人に対して、愛があると仮定しよう。
実際、どんな人にもあなたへの愛はあると考えるとすごくハッピーになれることは確かだけど、今回は逆で考えてみよう。
あなたの心には、どんな人に対しても愛が存在する。そう考えるとどうなるか。
あなたが愛している人が、あなたの悪口を言った。
あなたが愛している人が、あなたのことを厳しい言葉で責め立てた。
あなたが愛している人が、あなたのことを傷付けて、裏切った。
とても辛いことで、落ち込むことは避けられない。でも、その人のことをすごく愛していると考えれば、どうにか許せるんじゃないだろうか。すごく嫌だけど、悲しいけど、でも愛している人だから。恋人や家族に置き換えて考えてみても良いかもしれない。あなたが愛を自覚したら、必ず相手が持つ愛だって見えてくる。あなたの中に愛が無条件に存在するとしたら、相手にだって愛が無条件に存在しないとおかしいからだ。必ず、愛は見える。あなたがみようと思えば、自ずと見えてくる。怖がることは何もない。
相手にされた嫌なことを許せたら、あなたはそのことでこれ以上苦しむことはなくなる。馬鹿にされること、一時的に嫌われることだって怖くない。裏切られたって大丈夫だ。その時あなたは愛を自覚しているから、あなたが望むように相手の愛だって応えてくれる。
その時あなたは前述したような対処療法を行っていることに気づくかもしれないけれど、それはもう「対処療法」ではない。愛があることがわかったから、行動が変わっただけのことだ。
「愛」は本当に存在するのか。
そんな真実めいたことは神様しか知らないのかもしれないけれど、大切なのは、愛を自覚することで人生はぐんと楽になるという真実の方だろう。
3 「愛」は無条件に存在する。でも、「愛し方」は練習しなきゃね。
「愛」は存在することがわかった。
でもだからってすぐに上手く人を愛せるようになるわけじゃない。
自分の中にある愛を自覚し、その愛を表現していくこと。愛情を持っていることを積極的に伝えていくこと。それこそが「愛する」という行動であり、人生を輝かせる唯一にして最強のツールである。
「愛し方」については、私が語るまでもなく、フロムが「愛するということ」で語っている。フロムは愛することを技術なのだと説く。技術は練習すればするほどに上達していくものだから、きっと練習を続ける限り私たちは人生をどこまでも楽に、喜びを増やし続けることができるのだろう。